静岡県浜松市に出張してきました。

都田建設さんが10年ほど前にお求めになって置いておいたPIAZZETTAのストーブ。これを使い始めたい、とのことで。燃焼パラメーターの設定のご依頼をいただきまして。

PIAZZETTA P957 両サイドのマヨルカ外装は外してあります。

機種は、いまは廃盤になっているP957。初めて見ます。キャリア浅。。

今回、いろいろありました。記録しておきたい内容が多々あったのでブログに掲載。備忘です。

さて、ご依頼いただいたのはありがたいところですが、やったことのない調整ですからどうなることやら。期待7、不具合で何もできなかったらどうしようと不安3。

道具やパーツの不備があると作業できず終いになる可能性もあります。

すぐに行ける距離ではないので。
ありえそうなトラブルを想定しひと通りの道具も積み込んでクルマで向かいました。

本体は、前日にアール&ビーさんが設置済

古い資料をひと通り(現在のPIAZZETTA輸入元の)グリーンフッドさんからもらって、目を通しておきました。10年間でのストーブの革新はありますがなんとかなると思う。

60Hz地域に50Hz地域設定のまま出荷された模様。当時の機種は周波数変換用チップを別途基盤に付けるらしく。しかしチップはイタリアから取り寄せないとありません。

動かないのだろうか?どうやら当時、50Hz仕様のまま(チップなし)で60Hz地域でも使用している例があるようなので、なんとかなるだろう、やれるところまでやってみようと。何もできなかったらどうしようと不安を払拭しきれないままですが。

さて作業開始です。

まずは、本体をばらして全体をチェック。

インナーバッフルも外しました。メンテ箇所もお伝えするため。

んー、この頃のは排気の流路に抵抗を設けてなかったんだな。今の機種だと、排気をところどころ淀ませて、熱交換の時間を増やしています。無駄に捨てる熱を減らす工夫であるとともに、灰を本体内灰溜まりにトラップする効果があります。この頃のはそれがまだないのね。

その他のところは、っと。

まず見つけたのは燃料タンクのビスが1本飛んでいたこと。長年置いておけば何かありますね。

たぶんタンクの中に落ちているはずですが見当たりません。パーツ拾い用のマグネット棒を突っ込みます。普通はくっついてくるのですが取れません。ここには無いのかな?
オーガーを回せばわかるだろう、と(タンクに落ちた異物が燃焼中に炉内にペレットと一緒に送られてくることもあります)。

後で確認することにして別の箇所のチェックに移ります。

燃やさずに各パーツに通電する「コールドテスト」のモードにて異常をチェック。

排気ファン、送風ファンは問題なし。

燃料送りのオーガーは。回り始めましたが途中でまったく動かなくなってしまいました。やっぱりビスを噛んでいる。取れません。軸は逆回転はさせられない。

仕方ないので、モーターの軸を緩めて噛んでいるビスを除去しました。

ふつうの住まいの現場だと、作業スペースが狭いので背面に回り込むことができず、この作業だけでも一苦労ですが、今回は背面側がガラス引き戸で全部ずらせたので楽でした。

そのビスですが、なぜか一箇所だけワッシャーを挟んであったようで、ワッシャーが噛んでしまったようです。それで取れなかったんだ。

次に、着火ヒーター(イグナイター)に通電。

手を当てて確認。次第に熱くなってきました。順調です。

と、思ったら。

リモコンがうんともすんとも言わなくなってしまいまして。ヒューズが切れたかな?基盤を開けて、ヒューズを引っこ抜いて導通の有無をテスターで確認。OKだな。。。なんだろ?

ブレーカーが落ちた模様です。日中で明かりをつけていなかったのでブレーカーが落ちたとはすぐにはわかりませんでした。

メインのブレーカーが落ちたので、消費電力の超過ではなく、漏電の模様。

この場面は、普通は参ってしまうかもしれませんが。

経験済です。

湿気が残っているとイグナイター周りで漏電が起こる場合があるのです。

しばらくファンだけ回しつつ、ドライヤーで暖気を吹き込んで湿気を飛ばしまして。

再テスト。
OK!
着火ヒーターも無事、コールドテストをクリアしました。

あの時は原因がわからなくて苦労したなぁと過去の事例を思い出し。

続いて本題のパラメーター設定に移ります。

PIAZZETTAのストーブは、リモコンでパラメーター設定をします(一部の機種は本体の操作盤で設定)。

デフォルト値をすべてメモし、類似の値の機種の取説を確認。

60Hz地域では50Hz地域に比べて、モーターが12%増しで動きます。

50Hz地域のままの設定だと、ペレットが過剰に送り出されてしまいます。そこで、12%減で設定してみました。

排気ファンの回転数(炉内圧)も、予めある程度合わせておきます。もちろん燃焼中は温度が上がりますから、圧が変わるので再度調整します。

ここから先は稼働させながらの調整です。

着火は出来ましたが燃料送り出しが足りません。失火しそうです。

安定化段階でも発煙があります。この段階での燃料供給量が足らないからです。ペレットに次々に火が移っていかないため失火したり、制御上必要な温度に到達せずにエラーとなって止まってしまいます。PIAZZETTAの場合は、着火から3段階の温度上昇をチェックして巡航運転に移ります。各段階での昇温が不十分だとフェイルセーフでストップさせるのです。同業の人たちから「停止してしまった」とたまに質問を受けるのですが、どの段階で止まったのか確認しておく必要があります。私はスタートと同時にストップウォッチで経過時間を計り、また都度、到達温度も記録します。特に初回はこの記録が重要です。巡航運転に移行したとみえたのに約40分後に止まってしまうこともあるのですが、それには合理的な理由があるのです。きっちり2時間後にエラーを繰り返す、という経験もしたことがあります。詳述しませんが。
とにかくエラーを回避させたくなりますが、何がどうなってそうなっているのかよく理解し、対処することが肝要です。だいたいの場合は、お客さんの心配そうな視線を受けながらの作業になるので。テンパりますよね!原因となりそうなところを一つ一つ潰していきたいというのが技術屋の考えですが、「(無言で)いつまでかかるんだろう?これ、元々不良だったんじゃないの?」プレッシャーを感じると手元が狂ったり余計なことをしたり。プロ意識と鈍感力を同居させたいところですが。
ストーブ屋同士の同業者の情報交換で互いの経験をシェアできるとよいですね。

それで、ペレット供給量ですが。
結果、50Hz仕様以上に増やしました。

燃焼中の出力を調整します。
この機種は4段階あります。

これも思いっきり増やしました。こんなに増やしたことないんだけど。少し心配になりましたが現況優先で。

燃料供給量は、PIAZZETTAでは「X秒間/12秒間」のXを調整します。“12秒間のうち、X秒の間、オーガーモーターが回転しますよ”という意味です。

ペレットの径や長さによって、オーガーのスクリュー部への噛み方が変わるので、最適化するには、(排気ファンの回転数だけでなく)オーガーの回転数、すなわちペレット供給量も調整した方がよいのです。

さて、技術資料の掲載値が参考にならないので。
仕方ないので、炎の立ち上がりを見ながら、更に都度炉内圧も調整しながら、各出力での最適な炎となるように調整します。

こんなことまでやったことはなかったのですが、やってみたらいつも以上にしっかり調整できたような気がします。

最高出力時、また最小時の燃え方は私はばっちりわかります。炎の立ち上がり、広がり、そして“色”です。!

最高と最小をそれぞれ合わせこんで、間の2つの段階を比例で設定。そして炉内圧の調整。

排気の温度、排気筒の抵抗によって炉内圧は燃焼開始直後と巡航運転時では変わります。巡航時にベストとなるように、排気温度の到達を待ちます。待っている間は、炎をチェックしながらウトウト。朝3時半に出発しましたから。

結果は、ばっちり合わせることができました。

そんなこんなで時間がかかってしまいましたが、ミッションコンプリート!やっぱりストーブ屋ならこのくらいの仕事は完遂できないと。

貴重な経験をさせていただきました!楽しかった!

P957 動画

森と水と太陽のエネルギー舎さんの投稿 2020年2月29日土曜日