本日はスチームアクアフィルターの設置2件、お伺いしてきました。

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スチームアクアフィルター(伸栄工業製)

当店ではお客様の屋外の環境やお好みに合わせて、ペレットストーブの排気方法にアクアフィルターをご提案する場合があります。

先にストーブ設置済の2軒のお宅で、アクアフィルターを取り付けました。

まずは2週間程度お試しいただいて給排気に問題がないことを確認し、使い方も納得いただいた上で新品と交換。不都合をお感じの場合は通常の立ち上げ排気管につなぎ換えます。

アクアフィルターのメリットとしては、排気管を立ち上げずとも、ストーブの排気に含まれる火の粉や掃除の際に出る灰をトラップできること。煙突・排気管があると周囲の人の目が気になる場合でも、すっきり納まります。

排気ファンで強制排気するペレットストーブの場合、薪ストーブほどにはドラフトを必要としないので、すぐに大気圧に開放できるアクアフィルターは、排気の流れだけを考えれば合理的な仕様です。かえって排気の抵抗が弱すぎて炎が暴れる機種がある、という話も聞いたことがあるので、採用の際は使用実績のあるストーブか、お試し後に使っていただいています。

「フィルター」といっても、水の中に排気をくぐらせるわけではありません。水面に排気をぶつけるだけです。それで灰、火の粉をトラップします。匂いはあまり変わりません。水との接触時間が短すぎますので。

通常であれば、排気周辺はあまり汚れないのですが、ペレットが燃焼皿を埋めてしまってススを出すような異常な燃焼をさせてしまった場合、排気周辺の壁が汚れることがあります(通常の管理をしていれば大丈夫)。
できれば家の角に設置するのがベターです。
現在のところ、接続にアルミのフレキシブル管を使っているので、管は毎年のメンテナンス時に交換します。材料代は数百円。ステンレスかエナメル張鉄管であればずっと使えます。

熱い排気がぶつかるので水が蒸発します。2,3日に一回は水を足してください。「浮き」が付いているので水量はそれでチェック。立ち上げでしたら、設置してしまえばシーズンオフまでは排気口の詰まりをチェックする程度で特に手がかかりませんが、アクアフィルターだと注水が必須です。それを面倒とするかこの納まりのよさを取るか。お試しにてその辺りの感じを確認いただいています(通常では立ち上げ配管を推奨しています)。
水がなくなってしまうと、箱が過熱してしまうので”必ず”水は入れるよう、うるさくうるさくお伝えしています。中の水が凍ってしまっても、稼働すればすぐ融けます。

当然ドラフト(※1)は効きません。万が一の停電で排気ファンが止まると炉内に煙が充満しますが、FF式であれば部屋の中にはわずかに漏れる程度であることを確認しています(FE式では吸気口からもれます)。

当初はイタリアからの輸入品だけでしたが、現在では輸入はなく、当店が使用しているものがお世話になっている伸栄工業さんにて製造しているものです。

今後、アクアフィルターを採用するケースとして、燃焼効率MAX 90%超えのペレットストーブにて検討しています。海外製の高気密住宅対応の、密閉性に優れた「シールドストーブ」のカテゴリーの機種で高効率のものが登場し、当店でも取り扱いを開始しました。当店では高気密住宅にはシールドタイプかそれに準じた気密性の高いストーブを推奨しています。その理由は今後の「マニアックな話題」で紹介したいと思います。

燃焼効率・熱交換の仕組みが良いので、それに伴って排気温度が100度以下と低くなっています(※2)。シングル管はもとより空気層のある二重管でも管の内側が結露(※3)する場合。ドラフトも弱いので、煙突を伸ばして無理にドラフトさせるよりも、ストーブから排気されて即、大気圧に開放してしまう。そんな方法がよいのではないかと考えています。低温排気で起こる問題は、その方が楽に解消できるだろうと。当店の営業エリアは極寒でも降雪地帯でもないので外気の影響が寒冷地ほどではなく色々とやりやすいです。

燃焼効率については、現在の各メーカーの技術をもってすれば90%超えは可能になってきています。しかし、そうなると排気が低温になり結露しやすくなる。結露すると、ススや灰が排気管の内側に次第に付着し、排気に若干含まれる未燃焼成分もタール化、しまいには排気口を塞いでしまう可能性があります。そうなると”非常にまずい”です。
立ち上げの排気管の場合は、排気は「熱いまま」出してしまいたいのです。

最近の業界の雰囲気としては、ペレットストーブでも薪ストーブ並の高性能の断熱二重管でしっかりとドラフトさせる。排気不良を防ぐにはこの選択は当然ですし、当店でもモチロンそうしていますが、観察事例からアクアフィルターをもっと検討してもよいかと考えています。

高燃焼効率のペレットストーブへのアクアフィルターの採用。来年には当店もずらっと各種のペレットストーブを並べ、各種の排気方法で設置する、試験もできるショールームの開設を予定しています。

火を使うものですから、なんといっても安全第一。ユーザーの使い心地を損ねない安定燃焼が必須です。

今回、少々マニアックな話でした。

※1 ドラフトについて
空気は温度が高いほど軽くなるので、上昇していきます。ドラフトとは、いわゆる煙突効果のこと。煙突や排気管内で上昇気流を起こさせて、炉内の空気(排気)を引きます。炉内は負圧になり、燃焼中は常に炉内から外に向かって排気が流れるようにします。排気が管内で冷やされてしまうと、ドラフトが弱まり抵抗になってしまいます。上で蓋をするようなイメージと言えばよいでしょうか。結露も生じやすくなりますので冷やさずに排気し切ってしまいたいのです。
私が90年代にペレットストーブに初めて出会った時、それは輸入物の機種でしたが排気ファンはありませんでした。煙突によって空気の流れを起こし燃焼させる、薪ストーブと似た構造でした。現在でも一部、排気ファンのない機種がありますが当店での取り扱いはありません。
排気管を立ち上げる場合、当店では立ち上げ長を1.5m以上を推奨。軒があって排気口と近くなる場合は短縮しますが最短でも排気管トップがストーブの燃焼室の上端よりも高くなるようにしています。そうしておくとドラフトが効きますので、万が一排気ファンが停止した場合でも排煙が室内に漏れだすことなく屋外に排出されます。
断熱二重管を長くとると、炉内と屋内の気圧差が20Pa以上の、ドラフトが効き過ぎる状態になる場合があります。そうした時は差圧計で計測しながら排気ファンの回転数を下げます。一部機種ではそうした微調整ができるものがあり、ベストな燃焼状態を保てるようになっています。

※2 排気温度について
その他の機種でも微弱燃焼では100度を下回る場合があります。

※3 排気の結露について
木質燃料に限りませんが、燃やせば有機物が酸素と結びつき、水蒸気と二酸化炭素になります。ごくごくわずかな一酸化炭素、未燃焼成分も出ます。水蒸気は100度を下回れば液化してきます。未燃焼成分も液化しやすくなります。
燃焼と熱交換の高度化により、燃焼で生じた熱を十分に暖房に活かせるようになってきている反面、排気温度が100度を下回るレベルの機種が一部登場しています。今のところ各メーカーの見解はまちまちです。日本のメーカーの反応として、これ以上燃焼効率を向上させると排気不良のトラブルを起こすため、80~85%くらいで留めるのが妥当、とするところが多そうです。これは合理的な判断かと私も思います。温かいのと効率がよいのは当然として、トラブルがないのも、メンテが楽なのも、とても大切。ペレットストーブにはその辺りの期待も寄せられているのではないでしょうか。