久々にブログをアップしたいと思いまして。

ちょうど先日、山本製作所さんのOUでのテストも実施したことですし。

気密については、過去にも何度か書いて来てますのでお読みいただいた方もいるかと思います。

ブログの 関連エントリー

Youtubeでもプレゼン公開してます。これは2020年に日本ペレットストーブ工業会でのメーカー部会研修としてまとめたもの。

ネット上には誤解や、完全に間違っているとは言えないながらも不正確なもの、散見されます。

自分は日本で○番この分野について、実証的に研究してきたペレットストーブ関係者です。「快傑ズバット」に怒られそうですが。あ、ズバットの決め台詞ご存知ない?年齢感じる。

ホントは○番かどうかなんてのはどうでもよくて、重要なことをエビデンス(諸条件で検証した実測値)を持って示せるか否かだと思うので。少なくとも業界の発展に資するそのような“エビデンス付き”の議論をできたことがない。残念ですが。主観ばっかり。私が本当に詳しいかどうかは「?」でも、エビデンスを一番持っていることは、断言しちゃってよいでしょう。

ストーブ業界にとってすごく重要だし逃げられないテーマなのにそのような状況が続いてきていることを嘆き、一石を投じ、知識を蓄積し、共有してきたつもりではあります。

前置きはこのくらいにして、結論を。表でまとめました。

これは例の工業会でのまとめを改定したもの。時間が経ってその後も検証が進みましたので一部改定しました。

改定しなければ、と考えた理由は、先日、山本製作所さんの「OU」で当店で過酷テストをやりまして。ここで「過酷」とは、-60Pa条件でのFF、FE燃焼を観察する、というものです。

FF 「強制給排気」のこと。燃焼用の空気は、外気導入しダクトホースで本体に直結。

FE 「強制排気」。給気は室内から取ります。外気導入せず。

山本さんの技術陣は自信満々でしたが。

結果は???

お見逸れしました。OU、-60PaでもFFでまったく燃焼に影響なし(回転数不変)。

密閉性が極めて高い機種であれば、余計なことは考える必要がなく、メーカーの規定通り設置すればOK、という結果になることを確認しました。もちろん、工事業者は壁貫通部の気密漏れに十二分に配慮した工事をしなければなりませんが。

以上。終わり。これから先は「おまけ」です。

今回のブログは上記が結論なので、時間の無い方はこれから先は読まなくてOKです。

なお、これまで検証してきた結果、OUと同等のレベルになっているのは海外製の1機種だけでした。数ある、いわゆる「シールドストーブ」はそこまでの気密性がないので、密閉性を高めているにもかかわらず、住宅の換気システム/レンジフードの影響を受けてしまいます(そのことだって、データ付きで初めて示したのは自分ですから。言っておくけど。っていうか他に測定しての検証やったケース知らないです)。

これが意外とめんどくさい。何度も書いてきました。

でもまぁ、FFにして条件振ってみると炎の状態や排気温度が即変わるので、“見ればわかります”。もちろん計測していれば数値の裏付けが取れます。

「シールドストーブ」にて、室内負圧の影響を受けているのか否か?エラーが出れば一目瞭然ですね。炎の状態が変わったり、炉内・排気経路が汚れやすかったり、ススがモクモク出たり、となるとやはり一目瞭然。

わかりにくいのは、 問題なく燃えている 場合。その理由。

・ストーブが自動的に排気ファン回転数を調整し、適切な燃焼が維持された からなのか、

・密閉性が十分に保たれているので数十Pa程度の負圧条件では影響を受けない からなのか。

その判別が一見しただけではわからないのです。

でも、わかりますよ。もっと突っ込めば。簡単に。

排気ファン回転数もしくは給気流量、炉内圧のどれかを測定すればよいのです。密閉性の高さで”問題ない”場合は、それらの数値は不変ですが制御で調整している場合は数値変わりますので。これらが確認できていることが(プロとしては)すごく大事。お客さんにはみなまで言う必要はないと思いますが。

OUは、給気補正するセンサーが付いているので、給気が足らないと自動で補正、排気ファンの回転数を上げてくれます。 テストではどうなった?-60Paでも回転数変化なし(FF条件の時)。

では炎の状態は? まったく問題なし。適正燃焼の炎です。

-60Pa条件では、もし室内負圧の影響を受けていたとすると、炎の状態がまったく違ってしまいます。“見ればわかります”。つまり密閉性の高さで負圧環境に耐えている、という結論になります。

FEでも実燃焼やってみました(写真はFF。このダクトを抜き差し)。

しっかり燃えてます。-60Paでもしっかり燃えてます。

ただし!しっかり排気ファンの回転数はアップ。負圧をキャンセルするようにフィードバックかかってます。負圧をキツくしていくとそれに伴いグングン回転up。給気量維持。

補正、効いてますな。

では急激に室内負圧を大きく変動させると? ついてこれなくてシャットダウンに向かうことも確認しました。フェイルセーフですからそれでいいんですが。
ゆっくり変えれば-60Pa、FE条件でも楽勝。これは安心です。経年劣化やガスケット傷みなどで多少気密性が落ちたとしても燃焼は適切に維持される、と考えてよい結果を示します。ちなみに、OUの場合は、ガスケットがヘタると扉のバネが伸びて密閉性が保たれる構造になってます。
よく考えたなぁ。

これらの結果から、OUの場合は、-60Paとは言わないけど、かなりの高気密住宅でもFEでも安定燃焼できるよ、と言えます。推奨はFFだろうけど(こうした機種の設置方法を検討する際、自分は、オフシーズン中の外気の流入抑止/錆止めの観点から、あえてFEを推奨することがあります)。

この、FEとFFでの各機種での燃焼を比較してきましたよ。これまで何度も。

その結果が、

FEの方が排気ファン回転数を下げられる、というものでした。

ストーブの密閉度が足りないと、外気導入しない方がストーブはスムーズに燃える、というのがこれまでの検証に基づく結論でした。

給気補正機構があればFFでもFEでも補正してくれます。これは機構のある機種は(一部の例外を除き)、ばっちり対応できているのを確認済です。

外気導入しないFEの方がスムーズに燃えるなんて。これは私たちの思い込みを覆す発見でした。これを数値で裏付けることができて、各機種で再現してきたことが、知識・技術の蓄積となりました。

しかしOUでは、それらを不要にします。簡単にしちゃいます。

いや、不要なわけではない。実際、どのような現象が起きているのかを深く理解するにはこれまでの積み上げは不可欠でした。それに、今後も、この一連の知識は役に立ちます。住宅の換気システムは色々です。それらがどういうものなのか即、正確に理解できなくてはならない。プロなんですから。今後も色々出てきそうな気配です。なんと三種換気なのに、室内の負圧をほぼ一定に保ってくれるタイプも登場しています。ダクト式。DC化によるモーター回転数の精緻な制御が簡単になったことがそれを実現したようです。おまけに省エネ。これ、ストーブ屋がだいぶ楽になる仕様ですぞ(やっぱり知識不要になる???)。デマンド換気なんてのも出てきている。進歩中。

一種でも室内外圧力差は無いように、つまり正負ゼロを維持してくれるタイプも出てきています。ただし高そう。一種換気はメンテが必須になるので、ユーザーさんを選ぶシステムでもあります(三種だってメンテ要るけども。ダクト経由の給気を室内に供給する一種とは三種のフィルター詰まりは全然意味が違う)。
冬と夏だけ一種、春秋は三種って運転もできるのあるらしい。知らなかった(シーズンオフ時に排気筒はキャップが必須になるか。サビ軽減目的のため)。

「FFだから(高気密住宅)でも問題ありません!」

「高気密住宅対応機種なのでOK!」

「そもそも高気密住宅なんて息苦しい。窒息しそう!」

どれも間違っているか不正確ですが散見します。最後のは論外。本を読め。

住宅の高気密化への各職方の考え方・技術のフォローアップに工務店さん苦労されてるようです。
職人さんの「俺はこのやり方でやってきた!」を更新してもらうのはなかなかたいへんのようで。
一方、ANDPADやグループウェアで写真報告や工程管理を進める工務店さんもちらほら。ストーブはたいてい施主支給で工務店さんからの発注はまれなので下請け契約外業者が入る場合、手続きが面倒になることもありますが。

脱線しました。

数年前よりも気密工事に関する具体的な記述、図解のある専門書が増えましたので関係者は必読です。

あと、この間、Facebookでチラッと投稿したのですが、

そもそもの24h換気の目的は、人の生活や家具などから発するCO2や水蒸気、VOCなどの汚染物質の室外への排気が目的なので、私たちストーブ屋の視点とは異なります。

ストーブ側で換気システムに対処するためにどうするかをここ5年くらい考え、実践してきましたが、換気側でわずかに正圧に振る設定とか、3種でも定風量なんてのが採用されるようになってくると、私たちはだいぶ楽になりますね。しかしそれらは価格もすごそうなので、やはり寒冷地以外では採用されやすいのは相変わらずパイプファン3種や24h換気機能付きレンジフード&お風呂換気扇となるのでしょうか。

そうなるとやっぱり、自分なんかが積み上げてきたことはこれからも役に立つ!に違いない!?(こうした言い分が負け惜しみになる日が早く来た方がよいのだけど)

最後にもう少し補足します。

山本製作所さんが自身満々だったのは、今回と同様の実際の「キツめの負圧条件下での」検証を既にやっていたから、ではありませんでした。根拠は機体の気密の測定条件の設定にありました。

欧州機種では(ストーブを密閉した上で)10Pa(※)の圧力をかけて漏れ量が既定値以下であることを確認する、というものなのですが、山本製作所さんはこれと似てはいるものの、日本燃焼機器検査協会(日燃検)の石油系ストーブの手法と基準値を採用しているとのことで、それが欧州木質系より厳しい条件だそうで。それで十分クリアしているのを確認済みだったので、「-60Paくらいなら問題ないはずだ」という事前の想定になったのだ、とのこと。

(※現在はENの規格が更新されて、50Pa圧条件下、になったはず。未確認。欧がどんどん変わるのは(ENベースにしてISOを握ろうという意図だけでなく)科学が機能する社会だから、と自分は考えてます)

そういうわけなので逆に、世の「シールドストーブ」が上記のような「FEの方がFFより回転数下げられる」状況であることの意味がわからなかった、らしいです。

今回、

日燃検基準なら高気密住宅でも問題なく外気導入オンリーで対応できる、と立証できることがおよそわかりました(確認したいこと残っているので「およそ」としました)。

EN/ISOにするのか国内の(石油系)燃焼器の規程にするのか等々、実際に最も有効な方法はどのようなものになるのか考慮しつつ、どういう基準を採用するか。それは自分の仕事ではなくて日本ペレットストーブ工業会のメーカー部会で検討お願いします。

今後、ペレットストーブが省エネ機器認定されるようになると、今まで以上に気密・換気に関する知識が求められますぞ。

長いですが冒頭のYoutube。ここで図解たくさん、条件明示、これでもかと必要な情報を入れてあります。

おしまい。

+ OUだけでなく山本製作所「ほのか」も現行機は同様の密閉性とのこと。ほのかには給気補正はないので自分は山本さんの中ではOU押しですね。

+ もし、気密不足、断熱だけ高い家になるとどうなるか?
例えば、日本住環境ブログ 【最悪な欠陥住宅】断熱性能だけ高い家の末路!回避するポイントとは

有名なのは、ナミダタケ事件 Googleで検索! これで流れが完全に変わったとも言える。

+ 気密工事に頼らず寒冷地でも快適な家づくり、サスティナブルの追求する例(池田さんたちのKANSO) ハードル高いと思いますが。

『薪ストーブライフ』誌 No.41にて、OU試焚レビュー 書いてます。

施工事例

さらにおまけ。
OUの排気のCO濃度を測りまして。ベストと思える安定燃焼時に計測。山本製作所さんに「いま、COどのくらいだと思いますか?」質問。いきなり聞かれても即答難しいですよね。
私は「炎の感じから、えー、80ppm!」と推測。
結果は?
79ppmでした。ほぼドンピシャ。
数値化で裏付けることを癖づけてきたので(笑)。
※実際にはCOは大きく変動します。当方保有のTESTO社の測定器は簡易型なので、平均値を表示していると思われます。