ロッテンブルク林業大学で、ペレットストーブの性能評価手法や燃料ペレットについて研究しているシュテファン・ペルツ教授がPelleStarの製造メーカー、豊実精工さんの招きで来日しています。

2017年9月20日、豊実精工株式会社本社にて、国内のペレットストーブ製造各社や関係者向けにレクチャーをいただく機会があり、この場に同席させてもらいました。

昨日のレクは、ロッテンブルグ林業大学 ペルツ教授(ドイツ)によるものでした。各研究機関で諸々の基準づくりのための条件を合わせるために同じストーブを使っているそうで、それがRIKAのものでした。教授は「一般で買うと80万円くらいする高い…

森と水と太陽のエネルギー舎さんの投稿 2017年9月20日

(Facebookページの投稿を貼り付けました。関連投稿あるので併せてFBもご覧ください)

ストーブ屋ですから、もう今の時期からは忙しくて。
予定が立たなかったのですが。事前にハンドアウトを送ってもらいまして、もうこれは、「行くしかない!」
やっばい。レベルの違うレクチャーだぞ、これは。日本でも、今後我々の業界に不可欠の知見が紹介されることがわかりましたので、もう行くしかないわけです。

最初は、末席を汚す、くらいのつもりで出かけたのですが。
早く到着したので、打合せ段階から臨席させてもらう幸運。ついつい口をはさみ出しゃばりまして。主催者および通訳さんの補佐を、頼まれてもいないのに買って出ました。
世界でも最高峰の研究をされている方のお話ですから、この分野の専門知識および補足的な科学的な解説、そしてバイオマスや再エネに必ずついて回る各国・EU圏の制度的なことなど補足しないと意味がわからないことがあると思いまして。「お前はわかるのか!」とおしかりを受けそうですが。まぁ、多少は。

前ふりはそのくらいにして。
本題を。

今回、豊実精工さんからの要請もあって、教授のお話のテーマは大別して2つ。

1つが、ペレットの品質について。ペレットストーブにとって、いかにペレットの品質が重要か、というお話です。機械的特性が灰の性状にまで影響を与えるという研究や含有成分とエミッションのがあって、これは非常に興味深いものがありました。

少し補足しておくと、環境関連で”エミッション”という言葉は頻繁に出てきます。木質バイオマスの燃焼においては、排気中の汚染物質のこと指していますが、量と質の両方の概念をこの言葉は持っています。廃棄物ゼロを目指す”ゼロ・エミッション”や、米国カリフォルニア州でクルマの全車種でZEV(Zero Emission Vehicle)を目指したプログラムがあることは有名ですね。
EU圏でも北米でも、ペレットおよび薪の木質バイオマスストーブやボイラーにて、エミッションの低減を目指すのは既定路線です。この点、日本では導入件数が少ないこともあって議論にもなりません。ですが、実際には、特に密集している市街地などで排煙の問題は起きていて、時にかなり深刻な状況なのであって、業者もユーザーも鈍感すぎるのです。今は局所的な問題ですが、数と規模が増えることを見越すならば、予めエミッションを考慮した製品開発は不可欠なのです。

もう1つが、ストーブの(特にエミッションの)測定方法、”beReal”について。
ペレットストーブなどの木質ストーブの性能評価方法は、現状でもEN規格(European Norm:ヨーロッパ統一規格)として定められているのですが、この測定条件が実際に家庭で使われる条件とはまったく違う、ある種、理想的な条件で計測しているものなので、実際に近づけた評価方法を確立しようという取り組みです。

クルマでもありますよね。計測方法が国内基準の10・15モード燃費からJC08への移行の時も議論になりました。今後はグローバルスタンダードのWLTPだそうですが。

当然の流れです。

それで。
興味津々のレクチャーの具体的な内容ですが。

これは長くなるので。
別の機会に!
というとさすがに怒られてしまうでしょうから。まずは箇条書きと若干の補足で。

 

ドイツのバイオマス燃料の研究者、ペルツ教授のクローズドのレクチャーを受けます。ありがたやー
新幹線にて予習中。
しかし、ホントに英語を勉強したことあるのか?自分。。。というくらい忘却の彼方。

森と水と太陽のエネルギー舎さんの投稿 2017年9月19日

 

 

以下は、スミマセン、人に伝えるというよりも、自分の備忘的に書いているので全然親切ではありません。許してください。

「・」は、レク内容の抜粋
「※」は、私の補足や考察、想像です。

・独では、一次エネルギーに占める再生可能エネルギーのうち、バイオマスがその70%を占める。
・熱量/価格で比較すると、木質ペレットが化石燃料などの他の燃料より安い。
・ペレットストーブが、現代的なライフスタイルの象徴になりつつある。(普及はストーブよりもボイラーが圧倒的)
・原料の微粉率と燃焼で生じる灰の量に相関がある。微粉が多いと灰が増える。スプルースでは差が見られないが、ヤナギ、ポプラなどで顕著に増える。
※これは、他の条件も影響している可能性はないか?樹種からして前者は用材、後者はエネルギー植林したものと思われ、栽培条件が違いすぎる。他のファクターの影響を考えつつも、微粉率-灰の発生量に相関があることは確かなようだ。ただ、これらの研究から想像できることとして、木質バイオマスのエネルギー利用は、既に木材産業からのカスケードとしては利用し尽くす段階にあり、これ以上の増産が見込めない。エネルギー植林を想定しなければならない段階に入ってきた、ということなのだろうが、これは産業の形態が大きく変わるのでたいへんだと思う。
・現在の日本のペレット生産状況は、10年前のドイツと似ている。日本はこれから可能性がある。
・欧州ではストーブ用のペレットはA1のみである。ストーブもA1の使用を前提に開発されている。
・今後のEU圏のストーブの(エミッション面の)開発方向は、
PMを 0.04mg/m3以下に、
COを 1.25mg/m3以下に、
していくことである。これらをフィルターや触媒なしで達成する。この方向性に製造各社は合意している、と言ってよい。
(ボイラーについては、更に厳しい基準の目標設定がされている。ここで言うボイラーの規模は、中小規模の主に家庭から集合住宅用のものを指していると思われる)

※エミッションについては、COとPMを低減する方向性で、諸々の調査研究が行われている模様。
・PMと無機成分の含有量に相関があり、特にK(カリウム)が増えるとPMが増える。
※この話は、一瞬わからなかった。教授に質問したら、排気中の塩の生成だ、というので理解した。
つまり、KがClやSO4と結びついて、KCl、K2SO4となり、これがPMの核となって生成していく、というメカニズム。
このレクには、来場者も「おー!」と盛り上がった。岐阜県庁や岐阜県立森林文化アカデミーの方も参加していたので、いろいろと意見が出た。戦後の拡大造林っで、元は田畑でKの多い条件で育成されていたり、栽培初期に施肥された例があるという。そういう話が紹介された。
なお、Kについては、クリンカーの生成にも大きく影響している成分であることはわかっているのだが、K以外にも原料の繊維の長さが影響している可能性など、エビデンスを元に議論したい課題が色々と出てきた。

この時は触れなかったのだが、記しておきたいことなので挙げておく。
Kは、燃焼温度が高いと灰に残りにくくなり、ガスに混じって大気開放されやすくなる。この性質は私は知らなかったのだが、今年たまたま聴講した福島大学の佐藤教授の研究発表で始めて知った。
一方、燃焼温度が高いとガス中のHC(炭化水素)は、より完全燃焼されることにより減っていると考えられるので、実際には、K-温度-PMの、やや複雑な関係性があるのではないかと想像する。

ここで、JISとISO/ENの(評価分析用に生成させる)灰の生成温度(灰化温度)の違いが気になる。灰を調べるために、ペレットを灰にしなければならないのだが、何度で灰にさせるか、という話だ。
JISでは815℃、ENでは550℃だ。これだけ温度が違うと、灰の量も変わり、低温で灰化させるENでは、JISに比べ30~40%灰が多く生じることがわかっている。日本ではペレット品質については公的な規格ではなく民間の規格だが、ここでいちおう灰化温度の違いを考慮した灰分の規格になっている。
だが、灰化温度の違いが単に量的な違いだけでなく、成分的な違いも起こしているとなると、考えなければならないことも変わってくる。しかも、Kという、最もエミッションに影響する成分に影響してしまうわけだから。
これは今後、提起するというか、少なくとも業界に関わる研究者・専門家には認識としては持っていてもらわなくてはならない。
私は、木質エネルギーに関連するものについては、灰化温度をENと合わせるべきで、別途JIS化すべきだと考えている。経緯の詳細は知らないのだが、JISの815℃というのはRDFなどを想定したものなのではないか(詳しい方、教えてください)。

なお、K以外の無機成分は、私は有害性や腐食性の性質のみで見ていたのだが、PMの核としても見なければならない、ということのようだ。
しかし、実際には、量的には K >> M(無機・金属成分)なので、Kの多少の増減に他のすべてがマスクされてしまう、と言ってよいと思う。

次に、beRealについて。(その2で紹介するつもり)